TsubasaShinya.Tokyo~鍼灸を身近に感じるメディア~

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鍼灸師のための革命のファンファーレ

何かと話題のこの本。
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いろんな人が読後の所感などをSNSなどでアップしている中、何人かの鍼灸師が「これは鍼灸師にとっても大事な考え方が詰まっている!」と投稿していた。

 

そりゃ読まなきゃな。と思い昨日3時間で一気に読んだ。

ので、ただ感想を書いても芸がないから

「鍼灸師のために具体的にどの部分をどう活かすか」まで考えて書いてみようと思う。

かなりネタバレをはらむけど、西野さんならオッケー!と言ってくれそうなのでいいだろう。書いちゃおう。

 

その前に「ああ、この人ミーハー西野信者なんだな」というフィルターでこのエントリを読んで欲しくないのであえてはじめに断っておくと、西野さんに対する印象は大衆のそれと同じで、本書でも触れている通りの

「炎上系&意識高い系芸人」で、はねるのトびら終了と相方の問題と共に好感度がなくなっていった人

といった感じ。嫌いよりの無感情だ。

 

だから、絵本えんとつ町のプペルが話題になった時も特に気にならなかったし、

”泣けるビジネス書”という謳い文句でベストセラーになった魔法のコンパスも「別にビジネス書に涙は求めてない」なんて思っていた。

んだけど評判いいのは知ってたし、その売れ方や広がり方、やることなんかは”意外と”面白いなあと思っていた。完全に斜に構えて見ていた。

 

そこで今回の革命のファンファーレ。

こちらは数名の鍼灸師が「これは鍼灸師に役に立つ」と言っていてなおかつ副題が「現代のお金と広告」とあったので、やっと”自分ごと”と思えたわけである。

また「この本を学生に読ませてあげたい!」とクラウドファンディングをやっている鍼灸学校の先生がいる、ということも耳にしたこともきっかけのひとつだ。(気づいたら終わってたのでパトロンになりそこねた)

 「こういう本って自分で選んで買って読まなきゃあんま意味ないんじゃ」と思っていたけど、そのあたりの導入もしっかり対策されていたようなのですごいなあと。

なによりクラウドファンディングをやる行動力にあっぱれ。

 

いつものことながら、前置きが長い。

 

鍼灸業界にファンファーレを鳴らせ

 

最初に、この本の中で一番響いた一節を紹介したい。

 

数年前の常識に根を張ってしまうと、時代の変化と共に沈んでしまう

 

数十年前ではない。”数年前”だ。

情報化社会においては日々常識が変わっていき、1年も経てば「当たり前」は当たり前じゃなくなることばかりだ。

ビットコインがここまで暴騰することを、一年前にどれくらいの人が予想していただろうか。

良くも悪くも、目まぐるしく環境が変わっていく。

そんな中で生き残っていくためになにより必要なのが「常識を疑う」ことなのではないか。この本を読むと一層そう思える。

 

鍼灸業界の現状

少ない言葉でいえば「閉鎖的・排他的・懐古的 」な業界といえる。

伝統医学を扱ってきているので当然と言えば当然だけど。

そしてこの記事でも触れたが、同業同士の繋がりすら限定的で、他の業種ともなると連携のれの字もないような現状だ。(あくまで一般論)

協会や組合もバラバラで、流派なんて星の数だ。てんでまとまりなどない。

 

認知と人気の違い

認知と人気はイコールではないという。

本書ではベッキーとゲスの極み乙女。の不倫騒動を例に挙げていたが

認知と人気はまったくもって別物だということだ。

ベッキーと言えば認知度は相当高く、たくさんテレビに出ていて普通に考えればそれはイコール人気なのでは?と思うのだが、どうやら違うようで。

その証拠に、あの騒動以来さっぱり姿を消したベッキーと、騒動すらも創作に利用して活動を続けているゲスの極み乙女。

ベッキーは「直接課金するファン」を抱えていなかったのだ。

 

鍼灸はどうだろう?

鍼灸もまたほとんどの人が「聞いたことある」程度の認知はあるだろう。

では人気はと言えば”受療率7%”と芳しくない状況。

新聞の一面やYahoo!ニュースに鍼灸を完全否定するようなバッシング記事が次々出れば、直接課金するファンが少ない鍼灸は終了だ。

 

養成学校も定員割れで次々閉校していき、鍼灸院接骨院も数は多いが新しくできては潰れていく。

 

そんな鍼灸業界に、果たしてファンファーレは鳴るのか。

 

具体的な広告の考え方

いくつか登場したキーワードをピックアップして書いていく。

箇条書きに近い形で文脈はあるようなないような。

 

うねりをつくる

本書を読んでまずやるべきことだと感じたのは

共犯者を増やすことだ。

活動の「起こり」のところから見えるようにしていき、一緒にうねりを作っていく感覚を感じてもらいながら支援してもらう。

「一般の人には鍼灸業界なんて関係ないと思われている」という前提を疑い、たくさんの”部外者”を巻き込んでいくような活動が必要だと思う。

以前別の記事でも触れた「鍼灸師じゃない人が経営者」の組織はやはりその辺がうまいので、やはり活動の広がりや展開においても一線を画す存在となっている。

いろんなところに共犯者が増えれば、鍼灸はもはや多くの人にとって他人事じゃなくなる。

そうして生まれた小さな小さなうねりが世間に影響を及ぼすような巨大なうねりになっていくのだと思う。

この「プチうねり」をまずは各地でそれぞれがつくっていかなくてはならない。

 アナログな集客の基盤となりうるこの部分は、多くの鍼灸院の持っていない力のように思える。

病院すら潰れていくこの時代に「医療とはかくあるべき」というものだけに囚われるのは危険な気がする。

 

負けない方法

商売で大事なのは「負けない」ことだ。これは孫氏の兵法でも大原則だ。

自分一人ならまだしも、家族やスタッフを抱えて負けることはできない。

博打を打つのではなく、必ず勝てるところで戦っていく。

勝てる競技がなければ、競技を作っていくという発想を持つ。

勝つために必要なのは勇気などではなく「確実に勝てる」といえる情報材料。

鍼灸院の運営で負けない為にはどんな情報が必要か?シンプルに言えば「需要」だ。

人口規模や競合や類似の業種からその市場の動向を読んで供給の規模をイメージする。

需要の分だけ供給し、需要が足りないなら需要を増やす工夫を。

いくらいいサービスでも受ける人のいないところでは成立しない。どこからでも人が呼べる強力なコンテンツがあるなら別だけど。

開業前なら商圏内のイベントに混ざったり、どこかの会場を間借りして体験会を開いたりして実際の反応や需要や人の流れをはかるのもひとつ。

なにもいきなり物件ありきでスタートしなくてもいい。予約が入った時だけレンタルスペースでオープンするのでもいい。

初期投資の回収までをきちんと描いて、毎月回っていくだけの顧客を作ってからオープンすれば絶対に失敗しない。

マーケティングや下準備をせずに開業するのはただの博打だ。

で、そもそも「客を増やそう!」と頑張らなくても、支援者を増やせばその支援者は自然に消費者にもなるのだ。

 

宣伝アカウントに宣伝効果があるはずがない

前回の記事でも書いたけど、人は”自分に関係すること”にしか興味がなく、いくらこちら側が「いいんだよ!」と言っても誰もグリーンだよ共感してはくれない。インスタやTwitterでよくある宣伝アカウントはほとんどうまく機能していない。

人気タレントの出るドラマの番宣アカウントですら微妙だ。

各SNSの特性などについてはまたいつか。

大事なのは何を言うかではなく「誰が言うか」なのだ。

 

いくら声高に鍼灸師が鍼灸の素晴らしさを叫んだところで広がりを見せない。

では誰が言うべきか?それは受けた患者しかいない。

いかに実体験に基づいた口コミを多く生むか。これに尽きる。

 

人は確認作業にしか動かない

これだけ多くの情報が手に入る時代。

「新たな挑戦」に博打をうつ必要がない。

だから評判がいいところに人が集まり、行列が行列を呼ぶ。

情報がないところに人は流れない。

まず実績を作るところから。どうやって実績を作るかは、考えてみてほしい。

 

「人の時間」を使う意識

鍼灸院で多いのが「一人治療院」スタイル。

受付から治療から事務処理から営業から経営から全部一人でやるのだ。

たとえ暇でも業務に追われて忙しい。

そんな中、集客する為に自前でチラシを作ったりポスティングしたりする。

経費もかけられないから。

しかし考えてみて欲しい。

「自分の身体をどこで使うのがコスパがいいか」

一人治療院なら治療に使うのが一番いいに決まっている。

ならば先ほど挙げたように「人の力」に頼って宣伝が広がる仕組みを考えるべきだ。

自分以外に「無意識の営業マン」になってもらうのだ。

また、ここで治療だけでなく他にも収入源が作れるならそれに越したことはない。

収入源があれば活動も限定されにくくなり、成功確率がぐんと上がる。

自分の身体はひとつで、自分の時間は1日24時間だ。

それを同時並行で100時間、200時間にしていく仕組みをつくる。

 

5年、10年に渡る広告を

「短期間で消費される広告」ではなく、ずっと残っていくような広告というものを考える。

それがどんなものなのかは正直まだ検討がつかない。

でも、フリーペーパーやリスティング広告のような消耗戦ではなく、一度作ればずっと使われていくようなそんなものがひとつあればいいように思う。

文化なのか、コンテンツなのか、なんなのか。

様々な方法で個人が発信できる「国民総クリエイター時代」と言える時代にはそれが連鎖していく仕組みはもうたくさんあって、そこで広がりを見せるような「楔」が打てれば。

 

鍼灸が「当たり前」になるために

最も業界に足りていない要素は”刷り込み”だ。

マンガのキャラクターに鍼灸師は出てくるだろうか。

ドラマの主人公が鍼灸を受けている描写はあるだろうか。

雑誌でモデルが鍼灸にハマっていると語っているだろうか。

社会の教科書に鍼灸文化の伝来についての言及はあるだろうか。

国会で鍼灸関連法についての議論はされているだろうか。

どの大企業のビルにも福利厚生のための鍼灸院が入っているだろうか。

 

大切な人へのプレゼントに、旅先のリラックスに、特別な日への準備に

鍼灸施術は定番になっているだろうか。

 

どうしたらそういうシーンで登場し、世の中の「当たり前」になっていけるだろうか。

外交、営業、政治。

確実に「今はやってないこと」をやっていく必要がある。

フォトジェニックを作り出しSNSのトレンドを攫うのは、すぐにでも取り掛かれそうだ。

 

鍼灸の「おみやげ化」

自分が消費者だった場合、買うモノと買わないモノを選別する。

ざっくり分けると、

買うモノ=生活必需品

買わないモノ=生活必需品でない

となる。多くの人にとって鍼灸は生活必需品ではない。

 

しかし、人は生活必需品じゃないものを必ず買う時がある。それはおみやげだ。

体験に紐づいていれば購買ハードルが格段に下がる。

 

著名な彫刻家の作品は買わないのに、シンガポールに行った際、作者不明の「マーライオン」の置物には手を伸ばす。本を買うのにあれだけ渋るくせに、演劇を観に行った際、「パンフレット」には手を伸ばす。本に比べて随分ペラペラで、随分値段も高いのに。

どうやら僕らは「作品」にはお金を出さないが、「思い出」にはお金を出すようだ。

中略

「おみやげ」が売れるのなら、自分の作品を「おみやげ化」してしまえばいい。「おみやげ」に必要なのは、シンガポール旅行や観劇といった「体験」だ。「おみやげ」は必ず「体験」の出口にある。

 

本書の中ではこの発想に一番驚いた。

鍼灸を「おみやげ化」するにはひと工夫もふた工夫も必要な気がするが、困った状況の疑似体験や講演などの参加型のイベントとセットにしてしまうのはよさそうだ。

ファッションイベントに出店して「あの人気モデルがやっているのと同じ施術が受けられる」というのもウケそう。

もっと言えば、鍼灸は「おみやげ化」の手前で「生活必需品化」してしまうこともできるかもしれない。

「院で施術を提供する」ということだけに限定せず、もっと側面を増やして新たな可能性を見つけていくこともできそうだ。

 

大局的なはなし

ここまでは方法論を個別に挙げた。

ここでちょっと大きい規模の話を。

 

革命のファンファーレ 現代のお金と広告ではアンチエイジングという言葉に触れていた。

西野氏はアンチエイジングを「歳をとるのがイヤだからそれに抵抗する」と捉えている。(たぶん)

もちろんそれも「アンチエイジング」という言葉の一側面だ。

鍼灸もアンチエイジング医学の一端を担っているが、少し意味合いが違う。

簡単に言えば「加齢によるリスクを減らして健康寿命を延ばすこと」だ。

西野氏風の言い回しでいうならば、

「歳を重ねる」ということへの不安要素を潰す行為のひとつが鍼灸だ。

言い換えれば「ポジティブエイジング」ともいえる。前向きに歳を重ねる為の概念だ。

そしてその鍼灸を流行らす為には「受けて後悔するような要素」を徹底的に潰していくことが重要だ。

「受けない理由がない」という状態にすれば、生活必需品になりえる。

 

大前提として

この「鍼灸を当たり前にする」ということの大前提として、

 

「一人でも多くの人に一度でも多く鍼灸を受けてもらうことが正義で、全ての鍼灸師による全ての鍼灸施術が良いものだ」

 

と思うことにした。性善説に基いて。

なので変な事をしてる奴は即刻辞めて、怠慢だなと思えば研鑽を続けて。

 

「たくさんの人が受けている」という事実をまずはしっかり作り、そのあとでその価値や信用をマネタイズしていく。

投げ売りではなく「マネタイズのタイミングを後ろにずらす」ことだ。

 

より業界が発展するために

「自分の本を売りたいのなら、ライバル作家の売上に貢献しろ」

という一節があった。

これは本当に鍼灸業界にも言えることではないかなと。

敵に塩を送ると、一見自分に不利益がありそうだが、大きな視点で見たらむしろプラスになる。

元気な院が増えるということは、それだけ市場に活況をもたらすことにつながる。

それは業界全体の発展もまたそうで、自院の発展の為には結局”業界全体”のことは無視できないのだ。

 

活況になってたくさんの人が鍼灸を受けるようになれば「分業化」が院間でできるようになる。

たとえば、美容の得意な院、スポーツの得意な院、眼の疾患の得意な院、難病専門の院・・・

互いの院に来た患者を最適な機関に紹介する。それは「ゆとり」がないとできないことだ。取り合いではなくわけ合い。

 

それは他の誰でもなく「患者にとって」最大のメリットではないか。

そして自分の「得意なこと」を突き詰めていけることは施術家としても喜ばしいことで。

 

院を超えて相互補完し合える業界。

 

たくさんの頭脳がフラットに集まって

「アイディアの待ち合わせ」ができる場があり、それぞれ成長していく。

 

そんな理想を実現すべく、

「鍼灸師ワンコインオンラインサロン」なんかを企画してみようかなと。

ノウハウ、データ、アイデアの共有がいつでもどこでも同じ志の仲間とできる。

 

そういう場所をつくらなきゃなと思った。

 

まとめ

 

革命のファンファーレを読んで、西野さんの印象がいかに「メディアによってつくられたものだったか」がわかった。

「よりおもろい方へ」と常に考えているのが読んでいて伝わり、すぐ何か行動したくなるようなそんな本。

鍼灸師に足りないものがたくさん詰まったこの本は、是非読んで欲しい。

3時間で読めて1500円くらい。それを高いと取るか安いと取るか。

「本のインスタ映え」という発想だけでもそのくらいの価値がある。それはホリエモンのアイデアだけど。笑

いつか鍼灸の何かしらの団体の顧問として西野さんに依頼ができたらおもろいこといっぱいできそうやなあなんて妄想したくなりました。おしまい。

 

革命のファンファーレ 現代のお金と広告

革命のファンファーレ 現代のお金と広告