鍼灸院を経営していく上で絶対に必要な物ってなんでしょう?
患者さん ですよね。
「技術一本でやっていく!」
「目の前の患者を治していれば自然と口コミ紹介で患者は一杯になっていく!」
とても素晴らしいと思いますし、理想的かなとも思います。
ですが「技術さえ素晴らしければ繁栄し続けられる」と果たして本当に言えるのでしょうか?
日本が誇る伝統工芸や文化は、いま危機に瀕している物も少なくありません。
時代が変わりニーズが合わず思うように売れなくなってきたり、継承者がいなくなって技術の伝承が途絶えたり。
しかしある側面では、伝統を守りつつ「価値を付け直す」ことや「技術はそのまま活かして現代風にアレンジする」ことで盛り上がりを見せたりしているものもあります。
中川政七商店さんがやられていることなどはまさしくそういうことかなと思います。
1716年、なんと享保時代に創業した現在13代続いている企業。
HP見ていただくとわかりますが、非常にオシャレで見やすく、ユーザー目線が考え抜かれています。とても老舗とは思えません。
その代表からの挨拶が、非常に鍼灸業界においても共感できることが書いてあるのでそのまま抜粋します。
明治以降、西洋からの様々なものの流入により、それまでの日本の生活様式は急激に変化していきました。
西洋からの文明の利器は日本人の生活をずいぶんと効率的にもしました。
しかし、一方でそれまでの日本の国土風土の中で培われてきた様々なものが失われていきました。
日本全国の工芸もそのひとつです。現代、ものがあふれ、利便性だけでなく商品背景(思想、ストーリー、環境)が問われる時代となりました。
そして日本のものづくりが見直されています。
こういった動きは利便性を備えかつ古来より培ってきた日本人の感性にあうものが求められている結果だと思います。
しかし、いまだ日本の工芸は総じて厳しい状況にあります。私たちは工芸をベースにしたSPA業態を確立した先駆者として、
そのノウハウをベースに日本の工芸を元気にする取り組みを始めました。
自社ブランドで培ったブランドマネジメント力と生活雑貨業界に特化した販路を最大限に活かした
業界特化型のコンサルティングで「産地の一番星」を数多く生み出し、日本の工芸を元気にします。2016年には創業300周年を迎えます。
これからも変化を恐れず、進化する老舗として、新たな100年を歩んで行きたいと思います。
どうでしょうか。
西洋医学中心の現代において西洋医学の限界やデメリットが様々な点で噴出してきている中、鍼灸をはじめとする東洋医学が今しっかりポジショニングして、西洋医学の苦手とするところを補完したり西洋医学的治療効果をより活かしたり、果ては西洋医学から頼られる分野の確立ができたりしたら業界の発展にもなるし、何より救われたり楽になる人が増えると思いませんか?
3000年以上続いてきた鍼灸という伝統医療を、あらゆる物事を考えるうえで大切な我々日本人に深く息づいている東洋思想を、現代において「より効果的に伝える」という努力は、むしろ現代に生きる僕たちの責務とも言えるのではないでしょうか。
僕は個人的には技術がある院ほど、集客やマーケティングを考えてほしいと思っています。
「本当に良い物」こそ、世に認知され広まるべきだと考えているからです。
集客やマーケティング=金儲けではありません。
むしろ逆で、良い物こそ広く伝える努力をしないことは怠慢ですらあると思えます。
社会的損失です。
「粗悪で利己的な偽物が、小手先のマーケティングによって世にはびこっている」
そう感じるのであればこそ、現代的な戦略をもって圧倒的認知と支持を集めて有象無象を淘汰すべきだと思いませんか?持つ者の宿命です。
企業の目的とは
さて。前置きが長くなってしまった。
かの有名なドラッカーいわく、
企業の最大の目的は顧客の創造だという。
よくわからんな。と思うよね。
企業は利益を生むことが目的!というのがまあ普通の認識。それはそう。
そして活動するには利益が必要。
でも、利益は活動を継続する為の「条件」のようなものであり、目的地たりえない。
じゃあ目的地ってなにかっていうと、結局のところ、利益を継続して生むためには価値が必要。要は世の中の役に立たないといけないってわけ。社会貢献。
でも「社会貢献が目的です」って言ってもピンとこない。
んじゃ社会ってなに?って言えば、つまるところ最小構成単位の「人」ってことになる。つまり「顧客」ね。
その「顧客」へ「貢献する」ことが目的。
顧客への貢献とはつまり、生活の充実であったりサービスの提供。
そして、顧客は受けた価値に見合った対価を払い、その総量で企業の価値は決まるわけ。
そうなると、企業の目的は
顧客に貢献することで社会に貢献する
ということになり、さらに突き詰めれば
「潜在的に顧客が求めているがまだ市場にない/知られていないもの」を世に出し、
「新たな顧客を創造する」ということになる。
ざっっくり言えば、
「良い物」をまだ知らない人に届けてあげる
ということなんじゃないかなと。
鍼灸院における顧客の創造
鍼灸院に関して言えば、とりあえず知られていないというのがある。
なにが知られていないのか?
・何に効くのか
・いつ、誰が受けるのか
・そもそも鍼灸ってなんなの?
そんなところ。
何に効くのかってのは意外と認知はされている。
「肩こりにいいんだよねー」「腰痛に効くんでしょ?」くらいには。
しかしどんな時、どんな場合は鍼灸なのかというのはあまり知られていない。
あえて鍼灸を受ける必要性というのが伝わっていないのだ。
これを鍼灸師側は勘違いしていて
・痛いから
・熱いから
・怖いから
受けてもらえないのだと思っている傾向にある。
だから、ブログやSNSで「痛くないよ~!」「怖くないよ~!」としきりに発信するのだが、そもそも問題はそこじゃない。必要性がなきゃ誰も注射に価値感じて受けないわな。たとえ痛かろうが痛くなかろうが。
注射にはワクチンという確固たる(っぽい)予防成分が含まれているから、打つわけ。
「痛くないよ~」といくら言っても、中身が空の注射は誰も打たない。
そう、発信すべきはどんなシチュエーション、どんな症状に鍼灸なのか、それをどのくらいどんな頻度で受けたらその後どうなるのかということ。
しかしここでもひとつ大きな問題が。
そもそも注目されてないのでそんな情報をただ垂れ流していても誰の目にもとまらない問題
というものがある。
情報発信する際にはしっかりと
・どこにいる
・どんな悩みを持った
・どんな人に
情報を届けて
・どのようにして問題解決して
・どんな価値を提供できるのか
という明確なビジョンを持って発信する必要がある。
「自分が得意とする技術についての情報」を「自分が助けたい人」に向けて届けるのだ。
ピンポイントにそうした人に届ける為には、その人がどこにいてどういう行動をするのかを予測する必要がある。
その為にやることがいわゆる「ペルソナ設定」というやつ。
実際に来ている患者さんの中で既に理想的なケースがもしあれば最も想像しやすい。
ペルソナ設定
たとえば、自分の得意とする分野が「四十肩」であれば
・40代前後の女性
に好発する。仮に1970年代後半あたり最も多かった名前「智子」としよう。
智子はなぜ四十肩になったのか...。
― 瀬戸内海の穏やかな環境で生まれ育った智子。
大学入学と同時にシティライフに憧れ上京。卒後大手企業の事務OLになり、入社3年目で寿退社。
大学で同じサークルだった先輩と結婚し、ほどなくして二人の子宝にも恵まれた智子。
子育ても少し落ち着き、ぼちぼちとやり始めたパートの事務職もだんだん長めの勤務時間になってきた。二人の子どもを産んでからというもの、抱っこにおんぶしながら家事に追われる日々。慢性的な肩こりや冷えも、かまっていられないまま社会復帰。
お局様のご機嫌を取りながら、セクハラ部長が近くを通るたびに身体に力が入る。
毎日の大半をパソコンの画面に向かいながら過ごし、家に帰れば家事に育児。ろくに運動や自分の身体のメンテナンスもできず、椅子から立つときに自然と出るのは「どっこいしょ」の掛け声。たまに「よっこいしょういち」だ。あゝ智子。
そんな生活のさなか徐々に動かしづらくなる左肩。
「イテテテテ。」
「少しほっとけば治る、かな?」
そんな智子の楽観もむなしく、日に日に上がらなくなり、痛む肩。
「これはちょっと、さすがに、生活に支障あるな…」
「どうしたらいいんだろ?」
智子美人だなおい…
はいここで問題です。
この時、瀬戸内出身の智子はどのような行動を取るでしょうか。
①知人に相談
②ネットで検索
③CMでやっていたフェ〇タスを買う
④家にあったコンドロイチンを飲む
⑤以前家にきていた鍼灸院のチラシを思い出す
⑥ウーマンなのでガマン
正解は、いつもあなたの心の中に。
まあ智子実在しないので。笑
④みたいな情弱じゃないことを祈るばかり。⑥の可能性も高いな。これまでトントン拍子できた感じあるからな、智子。
まあでも、だいたいネットで検索するんじゃないすか。このご時世。
その前に⑤のチラシとかがうまく印象に残る感じで届けられてたらよりいいわな。
もっと言えば、智子に「鍼灸師である自分の存在」がいい風に認知されてたら完璧。
てな感じで「実際に困っているあなたにとっての智子」をリアルに描けているかどうかって結構集客する上で重要。
智子の心理や行動の傾向がわかれば、発信する情報や方法がかなり具体的になる。
次回は具体的な発信の方法についてをお届け予定。