TsubasaShinya.Tokyo~鍼灸を身近に感じるメディア~

鍼灸師目線で世の中のことを見ていくメディアです。経営のことや組織論などのカタい話から「やってみた」「いってみた」や「美人すぎる鍼灸師」などの情報を好き勝手にお届けしていきます。

【シンツバ訪中記 前編】最先端の中医臨床現場をみて思ったこと

今回の3月18日~22日中国訪問を、振り返りながらまとめたいと思う。

まず「何しにいってたの?」という話。

 

そもそもは「名古屋に中医学の達人の先生がいる」という話から始まった。名古屋医専で中医学を教えている張先生という方だ。

そしてその張先生のお師匠という、中国の権威である韓先生が来日して名古屋で技術セミナーやるよと。そんな話が入ってきた。

しかしながらタイミングが合わず参加できなくて、惜しいことしたなあーと思っていたところ「張先生の引率で中国最高峰の中医学大学に研修にいけるよ」という、一度で二度おいしいみたいなお誘いがきた。

 

何を隠そう、中医学のちゅの字も知らない新屋。

「そろそろちょっとは勉強しなきゃなー」とか思っていたところ、いきなり本場の最前線に突撃できることになったのだ。

生まれて始めて食う牛肉がA5ランク松阪牛みたいな。(わかるようでわからん)

 

いざチャイナ

 

貴重な勉強ができるとは言え、全くいい印象のないチャイナ。

 

【出国前のチャイナイメージ】

  • 空気汚い
  • 民度低い
  • 声がでかい
  • 自己中
  • メシが怖い
  • 水が飲めない
  • お腹が不安
  • トイレがヤバい
  • 店員のサービスがヤバい
  • 土産に買うものがない
  • ぼったくられる
  • ホテルが汚い
  • SNSが使えない
  • ロマンティックが止まらない

 もう散々である。

 

行く直前のテンションは最高にロー。重度・ロウ。 

こんなクソ面白くもないダジャレしか言えないくらいのコンディション。(平常運転)

 

なんのアナウンスもなく突如離陸する中華航空にビクつきながらも無事到着。

北京空港に着陸する前に窓の外を見て、想像以上の空気の汚さにビビる。

 

対策として持ってきたこの「ちょっといいマスク」

到着して満を持して付け替えてまたもビビる。

息のしやすさが段違いなのだ。驚きの通気性。

 

  

はい。まだ着いたとこまでなのに既に長いこのブログに嫌気がさしてきている。

 

今回の参加者は28人とのこと。

空港で東京、大阪組と合流する為に待っていたところ、驚愕の事実が発覚。

なんと同じ名古屋発の人が1人乗り損ねたらしいのだ。

集合して、一緒に保安検査していたのに、だ。

 

事前情報として「チャイナエアは平気で予定の2~30分前に出発する」とは聞いていた。そしてホントに20分前に出発した。

それにトイレかなんか行ってたら乗りそびれたそうで。

 

既に試練は始まっていたのだ。

 

帰る頃にはおそらく2~3人になっているに違いない。

 

チャイナとの出会い

 

今回の最初の目的地は天津。

北京から車で二時間ほど。

f:id:tsubasa-shinya:20180324111450j:plain

バスに乗り込み一路天津へ。

f:id:tsubasa-shinya:20180324111553j:plain

写真左が今回の引率の張先生。右がガイド兼通訳の劉さん。

 

首都・北京を出て数分、即広がる荒野。

f:id:tsubasa-shinya:20180324111647j:plain

f:id:tsubasa-shinya:20180324112030j:plain

土地余りすぎ問題。

この緑のネットは、環境汚染や砂漠化を他国に指摘されて中国が行った「緑化対策」だ。上空から見たら緑だからね。

よっ!洒落がきいてるね!

 

ではここで今回前情報をほぼ入れずにやってきた私の旅の仲間をご紹介します。(当日まで誰が来るか知らなかった)

f:id:tsubasa-shinya:20180324111519j:plain

左から勢力匡展先生。

豊橋で2院展開し猛威を振るっているイケイケ鍼灸整骨院のオーナーである。

そして相当な変態でもある。新屋のこの旅の相部屋パートナーだ。

seiriki-seikotsu.jp

そのお隣は宮崎圭太先生。

千葉県の柏で婦人科と美容で人気の鍼灸院をやっていて、経営塾なども主催しているやり手の先生。

「鍼灸海外ニュース」という海外の鍼灸に関連する論文の翻訳メディアも運営している。

柔らかい印象だが、今回2度目ましての新屋にはわかる。この人もたいがい変態だ。

www.studioshuca.com

そして奥にいるのは岡部芳幸さん。

言わずと知れた鍼灸用品を取り扱うディーラー「メイプル名古屋」のイケメン社長だ。

初めて会う参加者の面々に「王子感ある」「オシャレ」などと初日こそ言われていたが、5日間の旅程でどういう人か全員にバレていた時点でお察しのド変態である。

www.maiple-nagoya.com

こちらのお三方に負けるとも劣らない変態・新屋の4名で行動をともにした。

そう。変態にまみれたツアーの幕開けである。地獄。

f:id:tsubasa-shinya:20180324111607j:plain

 

旅の日程

 

で、結局中国で具体的になにすんの?って話だよ。

ざっくりスケジュールを書く。

【1日目】

北京着→天津移動

中国名人推拿特別セミナー

夕食

 

【2日目】

天津中医薬大学研修開校式

漢方薬膳セミナー

学食での昼食

天津中医薬大学付属医院臨床研修

夕食

 

【3日目】

天津中医薬大学研修

顔面鍼・鼻鍼・耳鍼セミナー

天津中医薬大学付属医院臨床研修

学食での昼食

地域医療センター見学

夕食

 

【4日目】

天津中医薬大学研修

女性疾患鍼灸特別セミナー

学食での昼食

美容素顔・推拿減肥特別セミナー

修了式

北京へ移動

夕食

 

【5日目】

自由行動

昼食

帰国

こういうスケジュール。

天津中医薬大学での講座は全て大学の中医師の先生によって行われた。

まずは真面目な内容から振り返ってみる。

 

鍼灸医学の最前線で見えた景色

 

今回の旅で最も衝撃だったのは、臨床研修で訪れた天津中医薬大学付属病院で見た光景。
f:id:tsubasa-shinya:20180324185036j:image
f:id:tsubasa-shinya:20180324185055j:image
f:id:tsubasa-shinya:20180324185109j:image

超でかい。

こちらの病院は中国でいくつかある中医薬大学の中でも「鍼灸」の分野でトップを走る大病院。いわば中医学の大学病院のといったところに溢れかえる人。受付にも待合にも人が溢れていた。
f:id:tsubasa-shinya:20180324185011j:image

1日1万人超の人が来るという。

今回そんな病院ではじめに見学させていただいたのは婦人科病棟の診察室。
f:id:tsubasa-shinya:20180324184638j:image

このような部屋に4人ほどのスタッフがいる。

日本の病院と違い、常に診察室の扉は開いており「〇〇様~!」と呼ぶようなことはなく患者が自ら勝手に入ってくるのだ。診察室に患者が数人いるのはザラ。

これはお店などでも全部そうなのだが、日本でいうところの「サービス」は一切みられず非常に対等な感じ。

サービスは患者側も求めてないし、病院側も提供しない。

なので回りくどいことや建前は少なく、互いに本音で話す光景は非常に合理的にも思えた。

患者は一人ずつ自分の診察記録ノート(お薬手帳のようなかんじ)を持参する。それをパッと無遠慮に取り上げる医師や、検査のオーダー書を忘れて出ていきそうになる患者の上着のポケットに捻じ込む助手などの姿は、日本ではとても考えられず見ていて面白かった。

日本の過剰とも言えるサービスや医師への気遣いは患者と医師の関係を歪めてはいないだろうか?とも思った。

 

基本的に中国の医師は

・西洋医のみ

・西洋+中医

・中医のみ

とわかれており、中医のみを専攻していても6:4で西洋の科目を多く履修するのだとか。その辺は日本とも似ている。レベルが段違いだけど。

今回見学させてくれた先生は西洋と中医で全体的に診るスタイル。基本漢方専門。

検査やオペもできるし、中医的アプローチもできるという、いわば西洋医の上位互換的存在に思えた。

問診し、脈診や舌診もし、スクリーニング検査もし、西洋薬と漢方薬を併用する。

その日ひっきりなしに訪れた患者はだいたいこのパターンだった。

国は違えど女性の悩みはどこも同じなんだなあと。
f:id:tsubasa-shinya:20180324184807j:image

僕の見学パートナーは大阪の婦人科医の井岡先生(写真左)

李先生、とても親切で物腰のやわらかい良い先生だった。いろいろなことを惜しみなく教えてもらった。

最後の最後に、李先生以外の人は全員他の学校からきている学生だと発覚してビビった。

普通に不遜な感じで座って患者に対応したり助手したりしていたのは学生だったのだ。しかも他の学校の。

先生1人に対し3人ほど学生が付き、学ぶのだとか。いわば研究室のような感じで、診療の傍ら後進の育成もするそうだ。どの部屋でもそうだという。

これも日本では考えられないシステムだと思った。

  

また別の病棟では鍼灸臨床の現場を見せてもらった。

見た科は脳梗塞の後遺症と顔面神経麻痺の専門科。

ひとつの部屋に所狭しとベッドが並べられ、15台ほどのベッドに横たわる患者をこれまた一人の医師が施術していく。

鍼の番手は5番(0.25mm)。手技は醒脳開竅法に基づくとのこと。

驚くべきはそのスピードと正確性。片手で田植えマシーンのようにブッスブッスと、寸分狂わぬ位置に刺していく。

ある程度の型はあるものの、患者により少しずつ違う施術。

座位で頸部に5番鍼刺したまま仰向けに寝かすのは衝撃的だった。

あまりの速さだったので聞いた参加者からの「刺鍼ポイントはピンポイントですか?それともおおまかなんですか?」という質問に対し、少し呆れたように「ポイントは少しでもズレたら効果が変わる。もちろんピンポイントよ。」と答えたその眼差しはまさにプロ。

まるで野戦病院のように押し寄せる患者は午前中だけで平均60人、1日100人くらいを診るという。1人で。

とんでもないことである。

 

f:id:tsubasa-shinya:20180324185258j:plain

天津中医薬大学付属医院とは別に、地域医療を担う市内の中核医療センターにも見学にいった。

こちらでは西洋と中医が半々といったところで、どちらが上ともなく包括的に患者を診ていくという点は中枢以外でもそうなのだと感じた。 広く統合医療が浸透していた。

f:id:tsubasa-shinya:20180324185344j:plain


こうした臨床の現場を実際に感じたのは、事実として圧倒的に市民に鍼灸施術が支持されているということ。

日本のように「統合医学という概念がある」というレベルではなく、当たり前に中医と西洋医学が融合していた。

教育や現場のレベルから見ても日本とは段違いに優秀な人材が豊富で、インフラ面から見ても圧倒的な差を痛感した。

中国では大学は貧富の格差に関わらず国の補助で誰でもどこの大学にでも能力さえあればいけるそうだ。競争が激しいので超難関に変わりはないが。

今回通訳してくれた中医学生もとても頭よさそうだった。

 

f:id:tsubasa-shinya:20180324185326j:plain

また中国では鍼灸や漢方などの中医学を法律で「国医」と定め、国を挙げて発展を目指している雰囲気があった。

もしかしたらこれからの医学の中心を行くのは中医学なのかもしれない、と感じるほどに可能性とパワーを感じた。

衛生環境面や仕組み面でまだまだ改善の余地はありそうだけども。

 

ともかく、衝撃的でシビれた経験となった。

 

中医学セミナー

 

そして今回のもう一つの目玉は中医学のプロフェッショナルによる中医臨床特別講座。

その道のプロによる授業だ。


f:id:tsubasa-shinya:20180324194340j:image

顔面・鼻・耳鍼の陳先生。日本刺絡学会の理事もしているそうだ。

耳や顔への刺鍼で、全身に影響を及ぼしたり迷走神経への刺激による作用で疾病の予防や機能性病変に一定の効果を上げられる、と。

いやそうなんだよ。「顔だけの鍼による美容効果なんて」とよく言われているけど、やはり顔や耳の刺激で身体に変化を及ぼすことってあるよなあ。

ピアスによる耳ツボ刺激効果などの話も大変興味深かった。

 
f:id:tsubasa-shinya:20180324194416j:image

婦人科の温先生。

中医から見た婦人科の問題へのアプローチの理論や治療穴などの講義。

大赫の無双っぷり。みんな。大赫だよ。これからは。

 
f:id:tsubasa-shinya:20180324194441j:image

美容推拿の李先生。

非常にキュートで通訳の中国人学生もデレデレ。からぽっくり。

しかし手のこなしは非常にしなやかで力強く、話もわかりやすく超頭いいんだろうな感が伝わってきた。(中国語だけど)

 

牛骨ラーメンの李先生。
f:id:tsubasa-shinya:20180324194527j:image

こちらも李先生。

f:id:tsubasa-shinya:20180324194552j:plain

中国では至る所で見かける李先生。一大ラーメンチェーン。

5日間の旅程でついに食べることは叶わなかったが、いつか食べたい李先生。

 

f:id:tsubasa-shinya:20180324111734j:plain

初日に訪れた天津の超人気推拿施術所の三槐堂での推拿セミナーもおもしろかった。

f:id:tsubasa-shinya:20180324111909j:plain

按摩と推拿の違いをやっと理解した。

f:id:tsubasa-shinya:20180324111816j:plain

学ぶことと体験することが多く多岐に渡り、頭いっぱいいっぱいな5日間だった。

 

日本の鍼灸はまだまだできることあるし、たくさんの鍼灸師や医師にこの現場を肌で感じてもらいたいと思った。

今回参加した27人のうち半数ほどは鍼灸師でなく、たくさんの医師が参加していたことに驚いた。今回は張先生の主催する「天津中医鍼法会」という勉強会のツアー。

そこには多数のドクターが中医師である張先生から中医学や鍼灸、漢方、薬膳について学んでいる。そして今回中国の中医の最前線を体験する会にたくさんの日本のドクターが参加しているのだ。これってすごいことで。

今回仲良くなった獣医の先生も、動物に対して薬膳や鍼灸などを行っているという興味深い話もたくさん聞けた。

 

どうしても日本では鍼灸師は医師から下に見られる傾向にある。カリキュラム的にも制度的にも人材的にも仕方ないことだと思う。

しかし中国での医療の現状を知っていて、こと鍼灸の技術や理論についての奥深さを知るドクター達はある種の敬意を持ってフラットに接してくれた。

もちろん鍼灸師の質部分の向上は欠かせないが、医師と鍼灸師が相互理解をする上でこの研修カリキュラムは日本の医療にとって非常に意義があることのように思えた。

 

もっと多くの鍼灸師や医療従事者にこの現場を見て知って欲しい。必ずそれが今抱えている患者の利益に繋がると確信する。

自分の中の医療や鍼灸の常識が見事にひっくり返る体験。

患者の為にできることは、もっとたくさんある。

張先生に出会えたことはこれからの僕の鍼灸師人生に大きく影響すると思う。そう感じた旅だった。

 

セミナー全日程を修了して認定証ももらった。

f:id:tsubasa-shinya:20180324194618j:plain

f:id:tsubasa-shinya:20180324194630j:plain

ひっさしぶりにしっかり学校で勉強した。気がする。

参加者のみなさんとも謎の結束が生まれ(勝手に感じてるだけ)やはり寝食を共にするって非常に人と人を近づけるなーと思った。

 

次回は「文化から振り返る中国編」