TsubasaShinya.Tokyo~鍼灸を身近に感じるメディア~

鍼灸師目線で世の中のことを見ていくメディアです。経営のことや組織論などのカタい話から「やってみた」「いってみた」や「美人すぎる鍼灸師」などの情報を好き勝手にお届けしていきます。

先生はどこを目指しているんですか?

「どんなビジョンがあるんですか?」

 

昨日見学に来てくれた鍼灸学生に聞かれた。

 

経営本とかマーケティング系のことを学んでいくとよく出てくるテーマ。

僕は結構感覚タイプなので、明確な目標設定をスケジューリングしてやっていくのが苦手。

 

何店舗やりたいんですかー?とかどんな風に事業展開していきたいんですかー?とかよく聞かれるんだけど。

 

そんな時決まって答えるのが

「んー、人次第ですねー。」というもの。

 

鍼灸院運営はパズルゲームのよう

僕のマンパワーでどうにかなるフェーズはとっくに過ぎてると感じてて、あとはどんなピースがやってくるか、みたいな。

つまりその…テトリス的な感覚です。笑

 

他業種からのノウハウやテクニックが流入してきて確かに一気に業界は拓けつつある。

けどそのノウハウが「そのまま」使えるものばかりではない部分もあって。 

 

鍼灸という分野は特にそうかなーと思ってて、ガッチガチの経営計画とマニュアルに基づいて進めるのは生半可な運営能力じゃ難しいと思う。

 その理由としては

  • 手技統一の難しさ
  • 人による部分の多さ
  • リソースが足りない

 ということかなと。

 

治療品質の標準化

はっきり言って、治療院業界の経営やマーケティングの一般は他業界から大きく取り残されている。なので外の世界の「王道」や「当たり前」が、昨今の鍼灸業界に大きなブレイクスルーを巻き起こしているわけで。

マニュアル化や経営の仕組み化などもその流れのうちで、接骨院の多店舗展開などもそれによってもたらされた。

 

鍼灸は一鍼灸師一流派とも言われるほどで、全く同じ見立てと施術方法で治療するのは非常に難しい。そのことが接骨院や整体系に比べて多店舗展開を難しくさせる最大の要因であるとも言える。

多店舗展開=品質の均一化が原則だから。

 

東京の鍼灸業界の巨人・カリスタさんなんかは、この部分の標準化と均一化に取り組まれているように思う。

膨大なマニュアルと徹底した研修、再現性を追求した施術構成を作っていっている感じ。

マニュアルや行動規範の一部を見るだけで、その徹底ぶりはわかる。

そんな中で核となる人材も傑出してきており、そうなってこれば多店舗展開は規定路線に乗る。

そんな カリスタさんをはじめとする鍼灸業界最大手の治療院の多くは、経営陣に鍼灸師ではなく異業種で活躍されていた方が舵をとっているケースが多い。いずれも類似他業種の成功ケースなどをうまく取り入れているように思う。

 

鍼灸治療の場合難しいのは「この場合はこう」というルールがなかなか画一的にできないところにある。

たくさんの経験やノウハウに基いて徹底した骨組みを作ることができる能力がある組織であれば、ある程度それが実現できるのだと思う。

 

では普通の鍼灸院の場合で考えてみるとどうか。

 

鍼灸師が多店舗展開するまでのみちのり

鍼灸師養成学校(最低3年)に入学

卒業年に国家試験(合格率75%くらい)を受け国家資格を取得

鍼灸院または鍼灸接骨院に勤務(もしくはすぐ独立開業)

独立開業

めっちゃ流行る(ここ大事)

スタッフ雇用

複数スタッフの育成に成功

運営能力のあるスタッフが出てくる

分院展開

分院の運営に成功

雇用&展開のループ

 

 

という流れが一般的かなと。どうでしょう。めちゃくちゃハードモードじゃないすか?

普通の鍼灸師が通常診療や雑務をこなしながら

「忙しくなってきたからもう一人採用したいな」

というような状況で多岐に渡る状況を想定したマニュアルづくりやしっかりした経営計画を立てられるのか。またそれを実践&修正できるのか。

優秀なプレーヤーであると同時に優秀な経営者でなくてはならないわけです。

たまにそんな人いますが 笑 普通そんな能力あったら別の道に進んでるわなと。

 

ましてや「自分の治療や対応をスタッフが同じクオリティでやる」ためのマニュアルを言語化・仕組み化できるか?

 

僕には無理です。超無理です。

だからやらなかった。それがたまたま功を奏しただけであって。

 

こもの鍼灸院の場合

ではうちがスタッフがポンポン増えて、2院体制でやれているのはなんでなんだぜ?という話。

 

おおまかには3つ要因があると考える。

  • 看板となる手技の統一
  • 箱推しありきの個人推し
  • 人間関係が先に立つ運営

うちにとって看板となる手技は「電気を流す美容鍼」で、

【特殊技術ではあるが、誰がやっても再現性のある画一的な施術方法】といえるもの。

インパクトがあり、集客力があり、効果も高い。いわゆるフロントエンド商品。

これがうちに所属するスタッフは誰でもできるということで『こもの鍼灸院ならでは感』が出て施術品質の均一性が守られる。

 

んでバックエンドが何かというと、人だ。

鍼灸というのは「何をしてもらうか?」より「誰にやってもらうか?」が重要なように思う。

プラセボうんぬんの話ではないけど、絶対信頼してる人にやってもらう方が効果が出る。これは間違いない。技術を凌駕するケースだって多々ある。

もちろん技術は大前提だが、信頼だってあるに越したことはない。

 

しかしながらこもの鍼灸院は平均年齢25歳と非常に若い組織であり、技術や信頼性を感じてもらうのにハードルがある。ので。

そこは「こもの鍼灸院」「電気を流す美容鍼」のコンテンツ力に頼る。

 

アイドルファン用語に「箱推し」というものがある。

グループの中の個人のファンである意味の〇〇推しに対し、そのグループ自体のファンだという状況を箱推しと言うそう。

 

アイドルとしてデビューしても、よほどの才能と運がない限り売れない。

それが例えば「AKBのメンバー」であれば「AKBの箱推しファン」には応援してもらえ、認知度が高まれば個人推ししてもらえるというわけで。

 

個人治療院であれば検索する時に「どんな先生がやっているんだろう」「怪しくないだろうか」というところが見られがち。

 

しかし「なんかよさげな院があるな」「効きそうなメニューだな」「評判よさそうだな」というところから入ってもらえれば、案外施術者は誰でもよかったりするみたいで。(実際ネットからの初診は施術者指名じゃない場合がほとんど)

 

あえて「スーパースター」を作らないことで、最初は箱推ししてもらえるように。

で、実際一度会って話してもらえば、うちのスタッフは皆人間的に非常に魅力のある人間なのでおおかた気に入ってもらえると。

箱推しのままでもいいし、個人推しになってもらってもいい。

 

看板となるいくつかのメインの手技以外は、基本的に統一していない。

でも「治療理念」といえる部分は統一していて、患者と向き合う姿勢は全員で同じ方向を向いている。

 

基本的にフロントエンドでしか集客していないので、バックエンドは施術者との信頼関係で構築されていく。

 

商品は人なので、施術は状況に合わせて。

患者の幸せを支えるパートナーとして長く寄り添うことを目指す。

 

ここで重要なのは

「人間的に非常に魅力あるスタッフだ」と断言できる人材を揃えること。

 

人材の確保についてはこの記事に。

 

で、うちはそのスタッフと僕の関係性ありきで成り立っている。

 

それだけ魅力があるスタッフで、顧客作れて売り上げ立てれるならこの業界の一般論でいえばみんな独立していきそうなもんだけど。

 

そこは本当にありがたいことで、みんなうちで頑張っていこうとしてくれている。

別に僕が魅力的だからってわけじゃなく、しっかりコミュニケーションをとってなるべく余計なストレスのない状態で働いてもらえるように努めている。

 

スタッフが頑張ってくれるからこもの鍼灸院は回っていくし、回ればそれがスタッフに還るようにしている。

んで僕の仕事はと言えば集中すべきところに集中できるようなお膳立てという感じ。

「こっちがやって欲しいことをやってもらう」ではなく「そのスタッフの能力魅力を最大限発揮できる方法を探す」ということ。

 

まとめると。

  • 「こもの鍼灸院ならでは」で集客
  • スタッフちゃんの魅力で掴む
  • 自分が頑張る方向ではなくスタッフたんが全力で頑張れるようにサポートする立場に回る
  • 余力が生まれるから僕みたいな凡人でも複数店舗の舵取りすることができる
  • 環境が人を育ててくれる

そんな感じ。

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叩き上げの現場仕込みだ!なんて言うつもりは毛頭ないけど、カリスタさんのようなブレーンがいないパターンでも「あれ、これならオレでもなんとかいけるんじゃね?」と思ってもらえるようなひとつのモデルになればなーと。

 

緻密なことのできないズボラな木偶でもなんとかなってますよ。みなさん。