気が向いたので、前回書いた記事の続きを。
前回の記事を3行でまとめると…
- 鍼灸院経営には患者が必要
- 企業の目的は顧客の創出
- 智子に向けた具体的情報発信が必要
といった感じ。うん。読まなくてもこれで十分伝わるな。
今回は智子に向けてどのように情報発信していくか具体的に考えていってみよう。
集客経路となりうる媒体とは
院に患者が来るまでには、なんらかの媒体を通して自院の情報を手に入れるという過程が必ずある。
最もイメージしやすく馴染みがあるのが「口コミ」だ。紹介ほどカッチリしていなくとも「なんかいいって聞いて~」みたいな。
あとは普通あんまりないけど「前を通りかかって」とか。(うちは立地的に結構あるんだけど)
僕はオフラインとオンラインでこれらの導線を区別している。
考えられそうな媒体とそれぞれの特性を簡単にまとめた。
オフラインの媒体
媒体 |
長所 |
短所 |
運用 |
チラシ |
幅広く周知できる 未開拓地を攻めれる |
埋もれやすく反応率は低め 地域差が大きい |
短期集中、3回セット データ集めが肝 |
フリーペーパー |
チラシより反応を出しやすい |
部数や知名度の割に高コスト、ブランドイメージ↓ |
短期集中、安売りイメージではなく想いや人柄で |
雑誌 |
ブランディングになる 既存顧客満足↑ |
効果測定しづらい 高コスト |
複数媒体に計画的に掲載 |
フライヤー |
コストがかからない |
これで集客しようと思うと難しい |
手に取りたくなるデザイン重視 名刺代わり |
野立て看板 |
潜在顧客のいる地域に継続してリーチできる為、 オンラインとの相性〇 |
表記できることが少ない 表現の抜け道を探すか業者を探すか |
顧客データの分析から来院しやすい地域or優良顧客のいる地域を狙う |
街頭看板 |
店の前に人通りがあるならとても有効 |
差別化がしにくいのでアイデア工夫が必要 |
見た目とコピーが命。チラシホルダー付きがいい |
勉強会、体験会 |
人柄、専門性を伝えやすく優良顧客にしやすい |
会自体への集客のハードルがある |
定期開催、プレスリリースとも相性〇 |
近隣挨拶 |
人柄を知ってもらえる 患者でなくともファン化して応援してもらえる |
ここでマイナスの印象を与えたらなかなか拭えない |
地域行事や会などにも参加するとよい |
法人営業 |
うまくいけば会社単位で顧客をつくれる デメリットが少ない |
成功するためのハードルは高く営業力と企画力が必要 |
近隣企業や相性の良さそうな企業、店舗訪問 法人営業交流会など |
TV、ラジオ |
ブランディングになる 集客も見込める |
広告でとなるとかなり予算がかかる |
イベントやキャンペーンに絡めてプレスリリースを出し取材を目指す |
タレント起用 |
ブランディングになる イメージアップ |
媒体によっては法的にNGの場合もある 効果の割に高コスト |
知名度や誰を使うかによって効果も変わってくる |
ざっとこんな感じ。コストかけずにやれるものもたくさんあるし、アイディア次第で非常に強力な導線になる場合もある。
人と人との繋がりは、集客うんぬんを含めずとも経営をやるならとっても重要。近所に顔見せ兼ねて挨拶回りしたり、地域清掃に積極的に参加したり、とにかく自分の顔とキャラを知ってもらいコミュニケーションをとること。
オフラインの集客においては、最大の広告コンテンツは「自分」ということを意識する。お店をやっている人が身近にいるなら、まず自分から顧客になるというスタンスもあるといいかなーと思う。
実績や特殊技術のある先生なら、一般の方向けの勉強会や体験会などもおすすめ。
オンラインの媒体
媒体 |
長所 |
短所 |
運用 |
HP |
こちらの伝えたいことを効果的な構成で作れる |
見てもらわないと意味をなさない |
SEO対策+PPC オフラインを誘導 |
ブログ |
専門性を伝えられる SEOにも良い |
読まれるためには大きなハードルあり |
主にSEO対策として 高頻度で更新 |
ポータルサイト |
レビューなどは来店意欲を大きく向上させる |
口コミを集める環境が必要 |
内容は徹底的に見る人の目線で構成 |
SNS |
院やスタッフの人柄や雰囲気を伝えられるので、これで集客できれば来る前からファンに |
売り込み、セールスは嫌われるので集客につなげるのが一見難しい |
「若者目線」でやる。「はじめて持った携帯がスマホ」の世代の感覚が重要 |
|
ブランディング向き 信用性の高い情報が好まれる ある程度の売り込みも可 |
いいねやコメントがその人の実生活にも影響するので慎重な傾向がある |
ブログ更新情報やイベント、取り組みなどの公的な情報中心 |
|
流れが早いので気軽に投稿できる 素や裏側が好まれる |
運用にセンスが一番必要なメディアである 集客はハードル高め |
言葉を中心にとにかくテンポや響き重視で投稿 または更新情報垂れ流し |
|
写真中心のメディアで、写真さえよければいい節もある 親近感を持ってもらうのに最適 |
売り込みが最も嫌われる 数を増やすまでが大変 |
受付さんや若手スタッフにこまめになんでもないことを投稿してもらう |
LINE@ |
開封率がとても高い 既存フォローに最も適している |
配信内容や配信数のバランスが難しい |
前日空き状況やキャンペーン情報の配信中心 |
PPC広告 |
チラシより細かいセグメントでリーチでき効果的 HPさえよければ一番集客向き |
競合によって単価が大きく変わる 設定運用に知識が必要 |
業者に依頼するのがいいが、反応や数値などはチェックできたほうがいい |
SNS広告 |
PPCを見ない層にもアプローチできる セグメントもさらに細かい |
広告内容によっては逆効果になることも |
デザイン、コピー、広告のセンスを全て持った業者が中々いないのが難点 |
記事広告 |
ブランディング、拡散性◎ 幅広い層にリーチできる |
雑誌等と同等またはそれ以上のコストがかかる |
人気ライターに頼んで長期間拡散を狙う |
オンラインの導線で最も重要なのが頻度とタイミング。
テキスト広告はコピーライティングが命。しかしながらSNSではあまり過激だと嫌われる。ノイズにならない程度の内容で接触頻度が高いことが好まれる。
Webの媒体は集客に軸足がいきすぎるとうまくいかないケースが多く「自分(たち)はどんな人か」「どんな想いでやっているのか」といったストーリーを中心に「顧客は何を求めているのか?」にフィットした内容で「自分はそれにどんな価値を提供できるのか?」を発信していくと効果的。
消費者には「広告」を見分ける目があるので、いかに宣伝じゃない部分でアピールできるか。
以前インスタをはじめとするSNSについても詳しく書いたのでこっちもどうぞ。
やっぱり大事なのは「なぜ」の発信。
自分はなぜそれを提供したくて、
患者はなぜそれを受けなければならないのか。
そこを軸に、どうやってそれを知ってもらうのかという戦略を組み立てていく。
具体的な順序
ターゲットとなる顧客がイメージでき、媒体もいろいろあることがわかった。
んじゃあ実際何をやるか。ってーとまあ全部やりゃいいんだけど、なかなか手が回らない!っていう声が聞こえてくるので優先順位を自分なりに。
まずスタイルや予算にもよる。バジェットねバジェット。(言いたいだけ)
単純に効果だけで言えば、
なにかと目に触れる機会が多く、またイメージがよい
という状況が作れたら勝ち。広告とはそういうもので。
2018年のCM好感度ランキングなんかを見ると、最近は携帯会社が占めている。
ここで考えていただきたい。
ここ最近ずっと1位を独占しているauの「三太郎シリーズ」を思い出した時に、具体的な製品やサービス内容について詳しく覚えている人いる?
まあなんか「ピタッと!」というフレーズが出てきて「ピタッと割」みたいなそんなんあったな。どんな割引?しらん。
程度じゃないだろうか。
とはいえ、
それがauのCMというのは認知しており、またイメージが良い
というのは、実際の購買行動の際に非常に強く影響する。
携帯なんて最近は1~2年に1回買い替える程度じゃないだろうか。
大半の人にとって、三太郎のCMは実際関係ない。車もそう。一生に数度しか買わない。でもCMはずーっと流れている。
いざ買おう!という数年に一度のタイミングの為にである。
鍼灸業界で見てみるとどうか。
そもそも広告に規制があったりするので明確な媒体で効果効能は謳えない。
広告じゃない媒体でよく見るのは
- 定価〇〇円→今なら〇〇円!
- 痛くない!
- 幅広いお悩みに対応できる!
- 臨床歴〇〇年の信頼と実績!
- 一人一人に合わせたオーダーメイドの施術!
みたいな。いや別にそういう長所を発信するのは全然いい。
でも、たとえばそういうCMが仮に地上波に流れたとして、好感度は取れないだろうなあと。
痛くない!をクローズアップしてイメージを伝えるならどうしたらいいだろう。
たとえばそれこそ三太郎のCMであれば、いつも「〇〇編」という形でその時ごとのキャンペーンに関する「キーワード」になぞらえたショートストーリー形式かなと。
三太郎のCM→auのCM
キーワード→なんとなく頭に残る
内容→面白くてイメージ良い
こういう要件を満たした土壌があってはじめて、中身がそれほどないイメージCMの効果が成立する。
「痛くない編」のCMを成立させる為には、「あ、これ鍼灸のやつだ」と認識されることがまず必須。
鍼灸のイメージCM、やりたいなあ。
優先度づけってどうしたらいいの?
これはまあ賛否あると思うし院の方向性にもよるだろうけど、うちはブランディング優先の広告展開で考えている。
というのも、やっぱり影響力や発信力がないとどんな情報も弱くなっちゃうし。
とにかく認知してもらうことと「ああなんか最近みんな鍼してるよね?」感を盛り上げたいわけ。
その上で
「こもの鍼灸院ってよく聞くよね。あれ?どこで聞いたんだっけ?」
「みんなこもの鍼灸院って言うよね?やっぱいいんだ?」
という状況が作れたら理想的。
人は商品を選択する時に「よく知っている方を選ぶ」という傾向があるので「なんとなく知ってる」というのは非常に有効。
じゃあ何からやればいいの?ってことなんだけど、やり始めに最も優先すべきはやはり身近なところ。院の近所や、知人友人家族に対して自分のやっていることを知ってもらえてる?ってとこ。
僕の商売観のひとつに「自分が取り扱うものを家族や友人にも勧めたいかどうか」というのはかなり大きくあって。そこに引け目を感じる物はやっぱり、よくない。
顧客にするしないはさておき、身近な存在に「自分のやっていることはいいこと」と思ってもらっておく、というのはまず最初の下準備として最重要だと思う。
で、次のフェーズは、いいと思ってくれてる人(身近な人)が自院のサービスのことを他人に話す時に見せられるツールが必要になる。
その最たるものがHPだ。今ならSNSのアカウントでもいい。店舗ならチラシやフライヤーなどを置いてもらっておくのもいい。
見てくれた人がガッカリしないよう、情報を見やすく充実させておくことがなにより重要だ。自分の専門性や人柄のわかるブログなどもリンクしておくと、実際の来院にも繋がりやすい。
そういうインフラが徐々に完成してきたら、今度は身近な繋がりのない層に対してアプローチしていく。
ざっくり言うと「地域住民」だ。
フリーペーパーや折り込みチラシなどをやるもよし、郵便局に依頼して「エリアDM」を送るもよし、(ある程度細かい地域や条件を指定して送ることができる)ネット広告出すもよし。
自院に来る可能性のある「見込み顧客」に自院のことを知ってもらう。
こうしたチラシやDMの反応率は0.1%ともいわれているので、1000部送って1人くるかどうかといったところ。
来るか来ないかの単純費用対効果もまあ大事だけど、最初はまず「なんとなく名前を知ってもらう」ことが優先なので、予算の許す限りは波状攻撃できるのが理想。予算がないなら足と頭を使おう。
ある程度「あそこにああいうことしてくれる鍼灸院があるらしい」という認知が広がってきたら、お次は「あの院凄いらしい」という部分。
これは自分で「うちスゴイで!」と言ってても仕方ないので、質の良い口コミを書いてもらう為の努力や対外活動や地域貢献活動などを積極的にしてコツコツ実績を積み上げていくのも大事。
そして治療の質の部分と、院の成長の様子を「どう見せるか」が肝なのかなーと。
結局、地道な発信を続けていく他ないんすよね。そこに予算を投じれるのなら、地道な発信に派手な要素と物量を混ぜていくと、スピード感が出ていいかなと思う。
あとは今の時代はネットで次々とリリースされる新サービスや、鍼灸業界で他に取り組んでいない部分に力を入れることでチャンスが広がるということはままあるかと思う。
Youtubeで継続的に手技や理論の動画を上げ続けることで、オフライン集客でいうところの「勉強会集客」に似た効果を出すこともできるし、商圏外の人にもアプローチできる。
拠点以外や海外などで仕事したい!という人にたまに会うけど、そういう人は自分からそういう案件をやる為の種蒔きをまずはやるべきかなーと。
まとめ
いろいろザーッと雑に書き殴ったけども。笑
広告の規制がある中で、いろいろ考えながらやんなきゃいけないわけで。
そして結局成功するかどうかっていうのは
・地道にやり続けられるか
・きちんと効果測定して改善していけるか
この2点に尽きる。
集客に魔法のような一手はない。あるとしても、それは「カードを持つ者」のみの特権。
あなたにとっての智子はどこにいて、今何に悩み苦しんでいるのか。
そしてどんな行動を起こし、どういう情報を好むのか。
あなたの智子はどんな智子?